碧鱗の竜王
概要
このシナリオは、GL4〜5程度のパーティ向けに作られたシナリオです。作成されたての初期キャラクターではほぼ確実に戦力外になると考えて間違いありません。
内容自体はシンプルなものですが、敵はかなり強力です。
オープニングシーン
サンプルシナリオ2同様、PCたちが、街のソルレオン神殿の客間で一堂に介している所から話は始まります。一般公募というよりは、深刻な事態に際して選りすぐられたメンバーだと考えてください。
PCたちが揃っているところにソルレオン神殿の司祭がやってきて、事情を説明します。
司祭の話では、妖魔たちが徒党を組み、森に囲まれた街道の一定範囲内で山賊行為を働いて通商被害を出しているという事が語られます。
これにより街の商業が大きな打撃を受けており、それでなくとも継続的に被害者が出ている事から、事態を重く見て精鋭を送り込む事になったという背景です。
妖魔たちの徒党はオークやグリンが主力ですが、その首魁はリンドヴルムの男で、"碧鱗の竜王"を名乗っている事が知らされます。
報酬は1000G.P.が約束されます。特に質問がなければ、ミドルシーンへ移行します。
ミドルシーン
ミドルシーンはPL側からの提案によってどのように展開されるか異なってきます。
予想されるのは、PCたちが自ら囮となって妖魔たちをおびき出そうとするか、妖魔たちの本拠地を探して直接乗り込もうとするかといった所でしょう。後者はさらに、直接森の中を調べに行くか、それとも被害者の生き残りに聴き込みをするかといった具合に分岐する事がありえます。
GMは下記の条件を元に、随時対応してください。
・妖魔たちの襲撃から逃げ延びた者もいる。通商用の乗り合い馬車の御者など。彼らに話を聞けば、具体的な出現ポイントをさらに細かく絞り込む事ができる。
・妖魔たちの本拠地は、森の奥深くに隠されたダンジョンにある。これを探し当てるには、森に直接赴いて、半日かけて【感知】で目標値15の判定に成功しなくてはならない。ただし、襲撃から逃げ延びた者たちから場所の情報を聞いておけば、目標値は13まで下がる。
・囮作戦を決行するならば、神殿が経費を出して馬車を一台貸してくれる。ただし荷台には価値ある荷は当然ながら載せられておらず、藁で嵩増ししているだけ。
一方、妖魔の山賊団についても触れておきます。
彼らの全戦力は、"碧鱗の竜王"ファングという名のリンドヴルムの男を首魁に、グリン・ストレガ×2、オーク・チーフテン×1、オーク・ウォリアー×4です。また妖魔ではありませんが、山賊行為の際にさらってきた人間を数人《魔牢》の魔法によって監禁しています。女性は妖魔の性奴隷にされ、男性は妖魔たちの食事の用意や武器の手入れなどの労働をさせられています。
もしPCたちが根城に直接来る場合は、この全戦力をもって迎撃してきます。
逆に、囮作戦を実行する場合、囮の荷馬車を襲撃するのはオーク・チーフテン×1、グリン・ストレガ×1、オーク・ウォリアー4です。
彼らのうち誰か一人でも生け捕りにしたあと、生き残りから根城の場所を聞き出せば、森の中を探すための【感知】判定の必要なく到達できるようになります。
彼らの根城にしているダンジョンの奥には、ヘレティアの若木が地下ながら自生しています。
"碧鱗の竜王"ファング
このシナリオのボスであるファングは、リンドヴルムの強個体として扱ってください。
一般的なリンドヴルムが孤高かつ怠惰であるのに対して、ファングは配下を持ち、組織立った行動を取らせる事を好む変わり者です。
と言うのもファングは、かつて一人で気ままに略奪行為の日々を繰り返していたところ、人間の討伐者に倒されそうになった過去があるからです。その証拠に、右の角は半ばから折れてしまっています。
命からがら逃げ出したファングは、旧スヴィニア王国跡に築かれた妖魔たちの帝国の噂を聞き、これを参考にしようと考えるうちに変わり者になったという経緯があります。無駄を嫌い、配下を持つ事で自身の総合力を高め、また優れた労働力になる人間を労役に使う事で自身に属する勢力の維持を容易にさせようと考えているのです。
もっとも、リンドヴルムだけあって根が単純で、そこまで高度な戦略を使うわけではありません。自分の配下に秩序がある事はよしとしますが、複雑な策を用いる事は得意というわけではなく、また生来短気な性格でもあります。特に、折れた角の不格好さを指摘されると、烈火の如く怒り出します。ですが、本人はリンドヴルムの中においてはなかなかの策略家だと考えているようです。
また、"碧鱗の竜王"という呼び名は、自分で考え、部下にそう周知したものです。
「俺の名はファング。人呼んで"碧鱗の竜王"! 逃げるなら今のうちだぞ、屑ども!」
「いいか、女と職人は殺すな。使い道があるからな! 貴様らもおこぼれに預かりたかろう?」
「まったく、貴様ら下級妖魔の低能さには呆れて物も言えん。非合理的な事をするな!
そんな事だから未だに我々妖魔は、惰弱な人間どもの土地を奪うことができずにいるのだ」
「貴様…今、俺のこの角を笑ったな!? もう許さねえぞクソがああぁぁぁ!!」
なお、ファングを倒せば、他の妖魔たちは散り散りに逃げ出します。
エンディングシーン
ファングを討伐すれば、ミッションは達成となります。GMはファングを死なせてもいいですし、後のシナリオフックになりそうなら逃げ延びさせても構いません。いずれにせよファングたちの一党が当面は活動できないほどに叩かれていれば問題はないでしょう。
エンディングシーンは神殿への報告が妥当です。ソルレオン神殿からは約束通りの報酬が支払われます。また、攫われていた人々も救出したのであれば、感謝の言葉は貰えるでしょう。
経験点は、順当に行けば3(ミッション達成)+12(敵の最高GL×2)+1(強個体)+5(魔物討伐)=21となります。各々のPCは、ここから(自身のGL×2)を引いた値を獲得経験値としてください。