バルハリア連邦
国土面積 ★★★★★ 国家人口 ★★★★
経済力 ★★★ 軍事力 ★★★★★
治安 ★★ 学術水準 ★★
天父信仰 ★★ 地母信仰 ★★★★
魔物脅威 ★★★★★ 国際緊張 ★★

バルハリア連邦は、フェルサリア中東部に位置する広大な面積の多民族国家です。
広い国土はお世辞にも肥沃とは言い難く、国土の2割近くを砂漠が占めています。

ほんの十数年前まで、フェルサリア中東部は、痩せた土地から来る貧困と資源不足の影響もあって、
小さな国家や部族が入り乱れ、国境も曖昧な混沌とした地帯でした。
しかし、この地方の西側に位置していたスヴィニア王国が魔物の侵攻によって滅亡した事をきっかけに、
この脅威に対抗するため、無数に存在していた小国や部族を統一し連邦国家を一代で築き上げたのが
現在も国王として在位している英雄王ゼノン・フェルエスです。

英雄王ゼノンは、かつてはとある小国の王に金で雇われていた私兵であったと言われていますが、
いかなる王に仕えていたのか、なぜ自ら権力の座に就いたのかについては正確な情報はありません。
武勇の誉れ高く、また誰に対しても分け隔てなく毅然とした態度で接する事から民の人気は強いのですが、
国内の傭兵団や武器商人、果ては一部の犯罪組織までもが彼を指示する姿勢を見せている事から、
その経歴に黒い部分が垣間見える人物でもあります。

いずれにせよ確実に言える事は、英雄王ゼノンは一代でバルハリア連邦という国家を築き上げ、
さまざまな文化や民族が混在しているこの地方を、瞬く間にひとつにまとめ上げたという事実です。
その政策には急進的な部分も含まれ、各地で異なる民族同士の軋轢もしばしば生み出しはしましたが、
結果的に旧スヴィニア王国跡に築かれたオークたちの帝国の侵攻を押し留める事に成功しており、
実質、フェルサリア中部における平和の守り手とも言うべき国家となっています。

ただし、その評価はあくまでも軍事力を用いた対外的な防衛力を指してのものであり、
国内では性急な国家統一から間もない事による貧富の格差や治安の悪さが問題となっています。

南部から中東部まではファーレーン王国から輸入した穀類や、自国内で収穫した麦と高原野菜が
主食となっていますが、乾燥した北部・西部ではそれらの保管も難しいようで、ジャガイモや豆類、
トウモロコシ、キャッサバなどが主食となっています。
また東・南部では老いた荷馬や農作業用の牛などを最終的に食肉に転用する事が多く、これらが
この国に住む人々の貴重な動物性蛋白源となっています。
西部の砂漠地帯やその近辺に住む人々は、トカゲの肉などでこれを代用しているようです。

首都アズーラ

首都アズーラはバルハリア連邦のほぼ中央に位置する都市です。
かつては小さな都市国家だった場所ですが、英雄王ゼノンが連邦統一に向けて活動する際に拠点とし、
彼を崇拝する者たちが次々と集って来て都市の規模が拡大していき、そのまま首都となるに至りました。

街の中央部には、都市国家であった時代の名残とも言うべき古い街並みが立ち並んでいます。
街の外周に向かうほど街並みは新しいものとなっていき、比較的外周寄りの位置に王城があります。
これはかの英雄王が古いものを好まない性分である事にも由来しているようですが、その本心としては
敢えてアズーラが都市国家であった時代の王城を使わず、全く新しい王城を建てて国家の象徴とする事で
統一化に入った各民族の地位は平等であると示す意味の方が強いようです。

現在の都市人口は約4万人程度です。
しかし、この近辺はバルハリア連邦国内でも、"琥珀の海"と呼ばれる砂漠地帯に次いで乾燥した地帯であり、
また硬い地質を持つ都合上、農作の取れ高は芳しくなく、食料の自給率の低さが通年で問題視されています。
近年では統一後の政策によって、比較的温暖な機構を持つ連邦南部や、南に国境を接するファーレーン王国、
北西に接するカルディナ教国との街道が整備された事によって食料の輸入が促進されています。しかし、
妖魔の帝国から周辺諸国を守っているのは自分たちであるという自尊心を隠そうとしない態度の者もおり、
それが周辺諸国から多少の不評を買ってもいます。

鉄鋼都市バルカ

都市バルカは、リアド山脈の麓に築かれた鉱業都市でした。
リアド山脈の鉱脈からは良質の鉄鉱石が採れ、これがこの街の主産業となっていました。
良質の素材が手に入りやすい事から、少なからぬ鍛造職人がこの街に工房を構えてもいます。

さて、良質の鋼は良質の武器の材料となるものであるからして、この街は都市国家であった時代から
周辺のあらゆる小国や民族と敵対関係を持たず、多くの国々にとって武具の重要な仕入先となっていました。
昔から絶えず民族間の小競り合いが繰り返されてきたこの地方で唯一と言っていい中立地帯であり、
どのような民族とも分け隔てなく交流を持ち、またこの地を訪れる者たちも不文律として、この街では
諍いを起こさない事が徹底されていた地でもありました。

しかし近年、スヴィニア王国が妖魔の軍勢に制圧されて状況が変わりました。
旧スヴィニア王国領にも程近いバルカは、当然のように、妖魔の軍勢の脅威に晒される事となったのです。
英雄王もこの都市の重要性は理解しており、貴重な良質の武具の産地を守るために多くの兵を派遣し、
砦を建てて守りを固めました。
その甲斐あってか、散発的な攻撃には幾度も晒されているものの、今のところ大きな被害はありません。

しかし、気難しい鍛造職人たちは、流れ者の傭兵も少なからず混じっている兵たちの砦が建てられ、
彼らが堂々と街を歩くようになった事に、良い顔はしていないようです。
かつては良質の武具を譲ってもらうためにへりくだっていた者たちが、今度は魔物から守る側になった途端
態度が横柄になったという話もしばしば耳にし、古くから住んでいる者たちとの軋轢が生じているようです。
高所から周囲の状況を一望できるようにと砦が山の近くに建てられているため、砦の傭兵たちが
街の人々を物理的に見下ろす形になっているのも、その状況に拍車をかけていると言えるでしょう。

琥珀の海

バルハリア連邦西部、旧スヴィニア王国跡との国境沿いにある砂漠地帯は"琥珀の海"と呼ばれています。
無数の砂丘から成る起伏の激しい土地ではありますが、夕暮れ時には大地が美しい琥珀色一色に染まり、
さながら波打つ琥珀色の海のようである事から、このような名がつきました。

ただでさえ乾燥した砂漠地帯である事に加えて、昼間は灼熱、夜は極寒という激しい気温の変化があるため、
人間のみならず、大半のまともな動植物は非常に生息しづらい環境となっています。
特に植物は希少なオアシスの周辺以外ではほぼ生息できない状態です。
このため農地として活用できる土地が非常に少なく、森林も見かけられません。
しかしそれゆえに、ヘレティアが浸食できる土地でもありません。
西の旧スヴィニア王国跡に勃興した妖魔たちの帝国が侵略しあぐねている原因のひとつが、この環境です。

もうひとつ妖魔たちの帝国を阻んでいるのは、砂漠に古くから住んでいた民たちです。
今でこそバルハリアの民として連邦の庇護下にある彼らですが、英雄王ゼノンによる連邦統一以前は、
彼らは砂漠を縄張りとし、希少な農地を守るため外敵を拒み続けた荒々しい戦士たちの民族でした。
彼らは"琥珀の民"と呼ばれ、フェルサリアの中でも独特の文化を持っています。

琥珀の民の社会には、厳しい身分制度が根付いています。
最高の地位にいるのは王族です。バルハリア連邦の傘下に位置するようになった現在でも、琥珀の民の王は
実質的な自治権を認められており、さながら属国の王、他国で言う公爵級の存在と認められています。
琥珀の民の間では、かの王族が絶対的な発言力を持っています。
それに続いて尊い存在とされているのは、聖職者です。
琥珀の民の中では聖職者はただの神威魔法の使い手と言うだけでなく、政務を取り仕切る立場にあります。
それも国外における一般的なソルレオン神殿のものよりも遥かに強力な発言力を持っており、司教ともなれば
大臣を兼務しているかのような地位にあり、王の名代としての行動すら許されるようになります。
これらの地位は生家の家業を世襲するものとなっており、よほどの事がない限り、より下の身分からの昇格も、
より下の身分へ降格される事も、まずありません。

もっとも特徴的なのは、それら特権階級に続いて戦士の地位がある事でしょう。
琥珀の民において戦士とは、平民・奴隷が成り上がるための唯一の手段と考えられています。
この砂漠にあっては、戦士は凶暴な砂漠の獣から、そして他の部族から土地を護るために必要な存在であり、
その重要性から準特権階級として、戦い以外の全ての労役から家族単位で解放されるという恩恵を受けます。
しかし戦士階級となるには、砂漠に住む恐獣を倒し、その牙や角を持ち帰る事で力を示す習わしとなっており、
まさしく命がけの試練を経なければ戦士としての栄誉を手にする事はできないのです。
しかし、平民、または奴隷の立場に生まれた者の中からは、毎年この試練に挑戦する者が多数出ています。
それは、この砂漠の地で民が従事する労役が厳しいものである事の裏返しでもあるのです。

排他的で厳しい身分制度に根差す独自の文化を持つ彼らは、近隣の民族や国家とも疎遠で敵対的でしたが、
英雄王ゼノンの意向による治水・農耕の技術供与と引き換えに庇護下に入ったという経緯があります。
彼ら琥珀の民たちの独自の文化は未だ廃れてはいませんが、技術供与により生活水準が向上したのは事実であり、
その恩に報いるべく、また彼らの故郷である砂漠を守るべく、西からの妖魔の軍勢の侵略に対して、
彼らはバルハリア連邦の先鋒の一角として今も外敵の侵略に立ち塞がり続けています。

灼熱の砂漠に住む彼らは、陽光を反射し熱を遮る白い衣服を好み、ほとんど肌を露出しません。
一方で、砂漠においては金属の鎧を着ている者は蒸し焼きになってしまうという事情から、彼らの間では
戦士であっても皮鎧程度の装備しかしない事が殆どです。武器もそれに合わせ、衝撃力よりも切れ味を重視した
曲刀や小剣が好まれる傾向にあります。