ヴァイスハイト共和国
国土面積 国家人口
経済力 ★★ 軍事力 ★★
治安 ★★★★ 学術水準 ★★★★★
天父信仰 ★★ 地母信仰 ★★
魔物脅威 ★★ 国際緊張 ★★★

ヴァイスハイト共和国は、フェルサリアの最北端に位置する国家です。
高い山による自然の国境によって国外と隔てられ、一年を通して深い雪に包まれた険しい自然環境の土地であり、
それゆえ諸外国との交流はあまりありません。
高地が多く空気が薄い事も、環境の厳しさに拍車をかけています。

しかし、厳しい自然環境の中で生き抜く術を日々模索してきたこの国の人々は、技術力を独自に発展させ、
さまざまな先進的技術を今日に至るまで生み出し続けています。
そうしなければこの国の人々が生きてこられなかったという背景はあるにせよ、彼らの生み出した技術は
諸外国に伝来し、フェルサリアの技術水準を向上させる事に一役買っています。

ヴァイスハイトで生まれた技術の中で最も大きくフェルサリアの文明を変えたのは、全智魔法でしょう。
全智魔法は、現在ヴァイスハイト共和国第二統括書記官――つまり国家の副元首として政務にも就いている人物、
大魔導師アルク・メギストが編み出した、比較的新しい魔法の系統です。
今を去る事50年以上前から、師は四半世紀を費やして魔法の原理を解明し、体系化し、無数の術式を編み出しました。
またその過程で、物品に魔法の力を付与する錬金魔法をも実現する事に成功しました。
今では、これらの魔法はフェルサリア全土に広く知れ渡り、世界全体の技術水準を大きく向上させています。

このように、ヴァイスハイト共和国は高山と雪に包まれた、外界から隔絶されたような環境にあって
深淵な智によって生き延び、そしてその智を発展させてきた国です。
ある者は雪に覆われた神秘の国と言い、またある者は得体の知れない不気味な国だとも言いますが、
いずれにせよ今の国家の形は、この地に住む人々が日々を生き抜こうとした結果の、必然の帰結なのです。

一方で、ヴァイスハイト共和国では郷土料理として魚料理が広く知られています。
凍った川の下を泳ぐ魚たちは、寒冷地帯であるこの国の人々にとっては、かつては重要な蛋白源でした。
それを辛めに味付けする事で、栄養とともに暖を取る事が好まれていたのです。
現在では魔術品を応用した温室農業が広まりつつある事によって古い風習になりつつありますが、それでも
客人をもてなす食宴には身の肥えた魚を使ったスープや包み焼きを最上のものと考える傾向が、高齢者を中心に
根強く見られます。

首都アル・マゲス

アル・マゲスは、首都でありながらヴァイスハイト領のさらに北部に位置する都市です。
元々は辺境の地でしかなかったこの地は、本来は交通の便なども非常に悪く、農耕が可能な貴重な土地を
いくつかの寒村が分け合って使用し、また野生生物の狩猟なども行って細々と暮らしている土地でした。

劇的な変化がもたらされたのは、アルク・メギスト師の研究が始まり、この地がその実験場となってからです。
師は魔術の粋を駆使して革新的な技術をいくつも生み出しました。それは例えば温室を用いた植物の栽培や、
錬金魔法で作り上げた動く人形による日々の作業の自動化、気温操作による防寒などです。
これらの技術は不毛の雪国だったこの地の文明レベルを一気に引き上げ、ただ寒村が点在するだけだったこの地を
十数年の月日を経て、国内の経済と産業の中心地にまで押し上げました。

アル・マゲスが人口1万人を越える大都市になった頃、並ぶ者なき賢人として名を知られていたアルク・メギスト師は
ヴァイスハイト国王として即位するよう多くの人々に推されていましたが、本人はこれを頑なに誇示し、
あえて共和制を打ち立てて、未来永劫、独裁権力の座に就く者がないよう土台を作ったに留まっています。
師は『自らの考えを放棄して賢人に全てを委ねるのではなく、一人一人が賢人であるべきである』との言葉を残し、
それゆえにこのような体制を築いたとも言われていますが、その言葉の出典は正確には知られていません。

アル・マゲスは王城というものを持ちませんが、政務に関係する3つの建物がその代わりに知られています。
立法に際し、国内から選りすぐられた賢人たちが知恵を出し合う『元老院』、
元老院の草案の実現可能性を、財政や外交などの面から各地の領主やその名代が検討する『貴族院』、
両院で可決された法に基く政務を統括する『総督府』。
この3つがヴァイスハイト共和国の政治の三本柱として、アル・マゲスの中心にそびえ立っています。
街の形状は元老院、貴族院、総督府を中心とした円周状に広がっており、随所に灯火や防寒のための魔術品が見られ、
街の外周近くにある工業・農業地帯は、自動化された魔術品によって粛々と作業を行う姿も散見されます。
深い雪の中、高度に合理化・自動化された施設が立ち並ぶ姿は、どこか機械的であり、神秘的でもあります。

なおアルク・メギスト師は、現在では総督府において、第二統括書記官という肩書で政務に携わっています。
実質的な国王である第一統括書記官には、アルク・メギスト師が擁立した、未だ齢40にも満たない政務官であった
ヨハン・クラウヴェルなる人物が就いており、師の補佐の下、総督府の行政を統括しています。

奥義者の塔

ヴァイスハイト領の中でも北東端にせり出した半島、そのほぼ中央に"奥義者の塔"は存在します。
この塔はアルク・メギスト師が半生を費やした全智魔法・錬金魔法に関する膨大な研究の資料が保管されており、
また師の後進としてそれらの技術を研究する者、魔法を身につけようとする者たちの集う学び舎となっています。
言うなれば、フェルサリアで唯一の大学と表現してもいいでしょう。

アルク・メギスト師の研究結果は、師が政務を主に手がけるようになってからも後進の研究者に引き継がれ、
"奥義者の塔"においてさらに発展され続けています。
その結果、さまざまな新しい魔法や、現実世界で言う家電製品などに代わるような便利な魔術品が作り出され、
研究者たちが自国に帰ってそれらを啓蒙する事で、フェルサリアの技術レベルが発展してきたのです。

"奥義者の塔"は、学ぶ意欲のある者には広く門戸を開いており、他国からの留学者も少なからずいます。
優秀な知恵者に先進的な技術を吸収させ、国益をもたらさせようというのは自然な発想と言えるでしょう。
しかし、"奥義者の塔"はフェルサリアにおける研究の最高峰であるという性質上、研究結果の管理は厳重です。
研究結果は必ず"賢人会"と呼ばれる監査委員の目を通してから世に出るようになっており、この確認工程において
例えば大規模な災害を起こしたりする恐れがあり、かつそれが簡単に行使できてしまえそうなものなどは、
門外不出の資料として厳重に保管されたり、利用にあたって多重のフェイルセーフがかかるよう術式に組み込んだり、
そういった安全措置を設けて、世界のバランスを崩す事がないように研究成果を管理しています。

"奥義者の塔"は国営の研究機関という事になっており、その活動に際して金銭的な利益の捻出は行っていません。
国家から与えられる予算によって研究費用が決まりますが、その研究は採算を度外視して行われています。
そのため留学生からも入学金を取るような事はなく、これが門を叩く者の敷居を下げています。
が、与えられた予算以上の事をするために、自己の研究成果物を有償で貸し出したり、売ったりする研究者も
塔の中には存在しています。もちろん、賢人会の確認を終えたものだけになりますが…