フェルサリアの人類

フェルサリアにおいて"人類"とは、天父神ソルレオンと地母神ミラの間に生まれた知的生命体全般を指します。
下記の通りの種族が存在しますが、これは現実世界で言う黄色・白色・黒色人種程度の違いと認識されており、
異種族間でも子供を作る事すら可能です。
ヒューマ

ヒューマは、この世界の人類のうちでも最も個体数の多い種族です。
平均身長は男性で170cm強、女性で160cm弱ほどで、現実世界における黄色人種に近い特性を持っていますが、
髪の色・目の色などは多彩です。
また、現実世界ほど栄養状態や医療環境が好ましくないため、寿命は60歳前後程度です。
国家の法律や地方の風習によって多少の差異はありますが、15歳前後で成人とみなされます。

多くの場合、都市や村落に定住している人類の8割近くはヒューマで占められています。
最も典型的なヒューマの市民は、木造または煉瓦造りの家に済み、畑で穀物や野菜を育てて暮らす者たちです。
現実世界で言う産業革命に相当するほどの技術的進歩がまだ起こっていない世界であるため、
全人口の7割以上が食料生産人口であるのが、この世界の実情です。
そして、器用でどのような環境にも適応できるヒューマは、その役割の大部分を担います。

比較的富裕である都市部においては、より豊かな暮らしを営むヒューマを見る事も少なくはありません。
商人や職人として暮らす者は勿論、学士や芸術家のような第三次産業に属する者も見かけられます。
また、極端な精神性を持たず、和を尊ぶ種族でもあるからか、宗教家や為政者もヒューマの比率が多いようです。

エルフ

エルフは、細身の長身に長い耳、さらりとした髪を持つ美しい種族です。
平均身長は男性で180cm、女性で165cm程度ほどとやや高め、貴金属のような色合いの髪を持ちます。
色白で、彫りの深い顔立ちをしている事が多く、現実世界での白色人種に近いと言えるでしょう。
寿命は150〜200年ほど。生まれてから成人まではヒューマと変わらぬ速度で成長しますが、
おおむね14〜18歳程度で成人体となり、その後100年ほどが経過してから老化が始まります。

エルフは肉体的には華奢であるため、あまり力仕事には向きません。
その代わりか、魔法の扱いには天性の才能を持っており、知的能力も全般的に高いという特徴があります。
そのため、彼らが能力を活かせる場所は、必然的に頭脳労働職が集約される都市部になります。
今日のフェルサリアにおいて、各種学問における研究や、便利な魔術品の作成などには、
大半の場合において、その第一線にエルフが少なくない割合で存在しています。
逆に農村部では、非力な彼らにできる仕事は限られてしまうため、農村で彼らを見かける事はほぼありません。

彼らは非常に聡明ですが、理性の強さゆえ、あまり激しく感情を表に出す事は多くありません。
また、知的能力――集中力も含む――に優れ、また魔法で様々な雑事を片付けてしまえる者が多い事から、
彼らはしばしば、他の種族が当たり前にできているような生活能力が欠如している場合があります。
特に学術研究に携わる者などは、最低限の栄養補給のための食事を取り、家屋の掃除もおざなりな者もいます。

これらの事から、何を考えているかわからない不気味な種族という目で見る者もいますが、
これは彼らが心を動かされる対象が、多くの場合、形を持たない精神的なものや知識のたぐいであるだけです。
彼らにもちろん喜怒哀楽はありますし、芸術や冗談を解するような心も持っています。
ただ、それを直截に表現する機会が稀である、というだけです。

いずれにせよ人類の中で、良くも悪くも、最も智と文明に依存している種族であると言えるでしょう。

ドヴェルグ

ドヴェルグは、褐色の肌で覆われた頑健な肉体を持つ種族です。
平均身長は男性で155cm、女性で140cmと小柄ですが、しなやかに引き締まった筋肉をその体に持っており、
髪は黒、茶色、赤茶色といった色合いが大半を占めています。
寿命はヒューマと本来そう変わりませんが、頑強な肉体ゆえに病にも強く、80歳ほどまで生きる者が多いです。
顔立ちの彫りは浅く、また目が大きいという特徴から、男女ともに実際の年齢より幼く見られる事が多く、
比較的老化が遅い事もそれに拍車をかけています。

強靭な肉体を持つドヴェルグは、都市・農村・鉱山など場所を問わず優秀な肉体労働者となります。
多くの者は第一次産業に従事していますが、手先も不器用ではないため、職人の道を志す者も少なくありません。
その怪力と強靭さは、鍛冶仕事や大工仕事においてはヒューマ以上の適性をももたらすのです。

彼らの精神性の最大の特徴は、その揺るがぬ意志の強さにあります。
彼らの多くはその肉体に比例するように精神も強靭であり、滅多な事では物事を投げ出したりしません。
魔物との戦いにおいても、人類の中で最も豪胆にして勇敢な種族でもあります。

また彼らは、一定の形ある秩序を尊びます。
最も小規模な例としては家族。より大きくは組織や生活の共同体の中における上下関係や規律、風習を尊重し、
それを乱す事を多くの場合嫌います。
ややもすると排他的な行動にもなりがちですが、逆に、同じ組織や集団に属する者に対しては
情に厚く、義理堅く接する事を良しとする精神が種族単位で根付いています。

一方、本質的に愚鈍ではないにせよ、その頑固さから、頭脳労働に関する適性は低いと言わざるを得ません。
柔軟な考え方が苦手で、ともすれば猪突猛進である彼らの特性上、やむを得ない欠点と言えます。

なお、青年と呼べる年齢に達したドヴェルグの男性は、稼業において一定の立場を獲得するにつれて、
その地位の高さに応じた量のヒゲを貯えるようになる事がしばしば見られます。
彼らは社会の秩序を尊ぶ特性ゆえ、自身の立場が上がればそれ相応の貫禄を出したいと考える傾向がありますが
短躯で幼く見られがちな顔立ちの彼らでは、なかなかそうもいきません。
地位の向上に伴ってヒゲを生やしていく風習は、これを解決するための工夫が風習となったもののようです。

リカント

リカントは、野の獣の特性をその身に宿した種族です。
平均身長は男性で165cm、女性で150cm強ほど。耳がこめかみの後ろではなく、側頭部についており、
個人差はありますがイヌ科やネコ科などの動物の耳の形をしているのが特徴です。
また、個体によっては尾が生えている者もいます。それ以外の特徴はヒューマに酷似しています。
寿命は全種族の中で最も短く、50歳ほどです。

彼らは敏捷で、また五感が鋭いため、農村部においては農耕や知的作業よりも狩猟でこそ進化を発揮します。
また野生の名残なのか、彼らは金銭や権力、名誉などに執着する事が少なく、
そのぶん日々の享楽、家族や友人との絆を大切にする傾向が見られます。
音楽や芸術、遊戯を愛好し、金銭的余裕があれば美食にも通じ、その日その日を気ままに暮らします。

そのため、都市部でその姿を見かけた場合も、社会的に高い地位である事は非常に稀です。
労働に従事するとしても、時間的な自由の利く職業である事が多く、
主だった形態としては配達屋が広く認知されていますが、
場合によっては天性の敏捷性を活かして盗賊に身をやつす者も時折見られます。
また、豊かな感受性を持つ事から、中には音楽家や芸術家などとして大成する者も見られます。

ヴァルキリーズ・チルドレン

ヴァルキリーズ・チルドレンは、神々の戦いの後、地母神ミラが人類に遺した力を受け継ぐ存在とされています。
一般人なら正気を失い魔物化してしまうであろうヘレティアの瘴気に対して、ある程度耐える事ができ、
魔物たちの侵略に対する切り札となる存在であると言えます。
ただし、瘴気にある程度耐え得る体質である事を除けば普通の人間と何も変わりません。
魔物たちとの戦いにその身を投じようとするのなら、後天的に相応の訓練は必要となります。

ヴァルキリーズ・チルドレンは、生まれつき体のどこかに"聖痕"と呼ばれる紋章型の痣を持っており、
それを隠す事さえしなければ、一般人と用意に識別する事ができます。
出生確率は100人に1人程度ですが、親がヴァルキリーズ・チルドレンであった場合、その子供も
ヴァルキリーズ・チルドレンとして生まれてくる可能性が高まる事が統計的事実として知られています。

ヴァルキリーズ・チルドレンの出生確率は、ヒューマ、エルフ、ドヴェルグ、リカントの4種族間での差異は
今のところ、無いようであると断定されています。
ただし、性別による差異は確認されています。
力の源泉であるのが女性人格である地母神ミラであったためか、ヴァルキリーズ・チルドレンの大半は女性で、
男性は全ヴァルキリーズ・チルドレンのうち30〜50人に1人程度であると言われています。

なお、聖痕の形は、『放射状に広がった線で描かれた円の下半分が"Λ"に隠れている形』であり、
これは天父神と地母神それぞれを象徴する太陽と山を意味していると言われています。